2026.06.12
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【特集】水と学びの両立-① 3歳から15年続けた水泳が人生を変えた話
静かな水面に、ひとりの少年が飛び込む。
その一歩は、やがて長い年月をかけて、大きな未来へとつながっていった。
今回ご紹介するのは、ダッシュスイミングスクール出身で、現在東京大学に通う岡智哉さん。
彼が水泳と出会ったのは、3歳の頃だった。
「母が当時コーチで、兄も水泳をしていたので、特別な理由はなく、自然と始めたんだと思います。」
気づけば、水泳は日常の一部になっていた。
そして岡さんは、そのまま高校3年生の夏まで、約15年間ダッシュで泳ぎ続けることになる。
振り返る中で特に印象に残っているのは、決して楽な時間ではなかったという。
「きつい練習を、仲間たちと愚痴をこぼしながらも真面目に取り組んでいたのが懐かしいです。」
📷ダッシュ選手時代の岡選手
ただ泳ぐだけではない。
そこには、同じ時間を共有する仲間がいた。
「学校の課題でもそうですが、“課されたもののつらさ”を誰かと共有しながら乗り越える経験は、本当に貴重だったと今になって感じます。」
この“共有する力”こそが、ダッシュの空気だったのかもしれない。
東大合格と聞くと、「もともと頭が良かったのでは」と思われがちだ。
しかし岡さん自身が語るのは、少し違う。
「一番大きいのは、忍耐力だと思います。」
結果が出ない日々。
思うようにいかない時間。
それでもやめずに続けること。
「きつい練習や結果が出ない日々に耐えた経験が、受験勉強を乗り越える力になりました。今でも、大学の課題に向き合うときに活きています。」
水の中で積み重ねた時間は、ただのスポーツ経験ではなかった。
それは、考え、耐え、乗り越える力を育てる時間だった。
岡さんの原点は、確かにこの場所にあった。
【特集】水と学びの両立-② 水泳と勉強は両立できる?リアルな時間の使い方
「正直、両立できていたとは言えないと思います。」
そう語る岡さんの言葉は、少し意外にも感じられる。
しかしその裏には、“現実的な努力”があった。
朝練を途中で抜ける日もあれば、放課後の授業で夕方の練習に参加できない日もあった。
周囲から見れば、不完全な両立だったかもしれない。
それでも岡さんは、自分なりのやり方で前に進み続けていた。
「通学中の電車で映像授業を見たり、簡単な課題は学校の休み時間に終わらせたりしていました。」
限られた時間の中で、できることを積み重ねる。
それは派手さはないが、確かな前進だった。
📷選手仲間と青春だぜ!
そんな日々の中で、特に大切にしていたのが“睡眠”だった。
「受験期以外は、毎日6時間は寝るようにしていました。忙しくても、一度リセットするために睡眠は大事にしていました。」
ただし、それに縛られすぎないことも意識していたという。
「5時間しか寝られなかった日を必要以上に気にしない。そういう柔軟さも大切にしていました。」
完璧を求めすぎないこと。
それもまた、継続するための工夫だった。
そして、しんどい時期を乗り越える中で、岡さんの中にある変化が生まれる。
「いつの間にか、“終わったことは仕方ない。明日のために今日は寝よう”と思えるようになりました。」
この“受け流す力”は、長い競泳生活の中で自然と身についたものだったのかもしれない。
すべてを完璧にこなすのではなく、
自分なりのペースで、続けることをやめない。
それが、岡さんの“両立”だった。
【特集】水と学びの両立-③ 東大受験で崩れかけたメンタルと乗り越え方
東大を目指す——
その決断は、突然のひらめきではなかった。
「中学3年生のときに、担任の先生から提案してもらいました。」
“水泳を続けながら東大を目指す”
その言葉は、岡さんの中でひとつの意味を持った。
📷東京大学入学式での様子
「自分の人生に必要な努力経験だと感じて、受験を決意しました。」
しかし、その道のりは決して平坦ではない。
競泳は、他のスポーツと比べて大会の時期が遅い。
周囲が部活を引退し、受験勉強に専念していく中、自分だけがまだ泳いでいる——。
その状況は、大きな焦りを生んだ。
「正直、かなり焦っていました。精神的に崩れて、スクールカウンセラーに通った時期もありました。」
それでも、岡さんは歩みを止めなかった。
その理由のひとつが、ダッシュで培った“集中力”だった。
「東大の試験は1科目150分。ちょうど練習1本分くらいの長さなんです。」
長時間、集中し続ける力。
それは、日々の練習の中で自然と身についていた。
さらに、大きな支えとなったのは仲間の存在だった。
「水泳を辞めた後も、ダッシュの仲間たちが励ましの連絡をくれました。それが本当にありがたくて…。」
メンタルが崩れそうなときも、
誰かが自分を気にかけてくれている。
その事実が、岡さんを前に進ませた。
「挫けずに努力し続けることができたのは、仲間のおかげだと思っています。」
プールで過ごした時間は、
ただの練習ではなく、“壁を超える力”を育てていた。
【特集】水と学びの両立-④ 「続けることに意味がある」と言われた日
「とにかく続けることに意味がある。」
その言葉は、今でも岡さんの中に残っている。
高校2年生の春。
体力的に限界を感じ、1ヶ月ほど水泳を休みたいとコーチに相談したことがあった。
そのときにかけられたのが、この言葉だった。
「どんな形であれ、続けることに意味がある。」
結果として、完璧な両立ができたわけではない。
それでも、15年間やり続けたという事実は、今の岡さんの大きな自信になっている。
「やりきった経験があるというのは、自分の支えになっています。」
そして、もう一つ忘れられないのが仲間の存在だ。
📷東京のモザンビーク大使公邸にてスピーチをしている様子
「普段はくだらない話ばかりしていました。でも、ふとした時にかけてくれる言葉がすごく嬉しかったです。」
「おまえはすごいよ」
「無理しすぎるなよ」
何気ない一言が、心を救うこともある。
また、岡さんは自分のことを「目立つ選手ではなかった」と語る。
それでも、チームの中では常に応援し合う文化があった。
「仲間を応援することが当たり前でした。でも今振り返ると、それってすごく特別なことだったんだと思います。」
お互いの頑張りを認め合い、声に出して応援する。
そんな環境が、ダッシュにはあった。
「チーム全体の人間性の高さは、本当に素晴らしかったと思います。」
速さだけではない。
人としての在り方を学ぶ場所。
それが、岡さんにとってのダッシュだった。
【特集】水と学びの両立-⑤ 水泳で育った力が未来につながる理由
現在、岡さんは東京大学で新たな挑戦を続けている。
「英語や中国語、アラビア語といった語学や、哲学・倫理などを学んでいます。」
視野は、日本だけにとどまらない。
「将来は、発展途上国の子どもたちに質の高い教育を提供したいと考えています。」
そのために、在学中にアフリカへ行くことや、留学にも挑戦したいという。
水泳で培った挑戦する姿勢は、今も変わらない。
📷在日アンゴラ人の方との文化交流イベントの様子
そして最後に、後輩たちへのメッセージを聞いた。
「仲間を大切にしてほしい。」
その言葉には、15年間のすべてが詰まっている。
速くなること、結果を出すこと。
それももちろん大切だ。
しかし、それ以上に大切なものがある。
「この上なく素晴らしい仲間たちと出会えた、かけがえのない時間でした。」
ダッシュで過ごした日々は、
ただの過去ではなく、これからの人生を支え続ける土台となっている。
岡さんの物語は、まだ続いている。
その先に広がる未来は、きっと多くの人の希望につながっていく。
あとがき【特集】水と学びの両立 〜DASHから東大へ〜
このインタビューは2025年春に行いました。
あれから1年が経ち、現在の様子を伺うと——
つい先月、念願だったアフリカへの渡航を実現したそうです。
📷ナミビア共和国渡航時に訪問した村の子どもと遊んでいる様子
「憧れていたアフリカの地(ナミビア共和国)で、小学校を訪問し、授業の様子を視察しました。教育を学ぶ者として、とても重要な経験になりました。」
さまざまな体験を重ねる中で、入学当初に抱いていた思いにも変化があったといいます。
現在は、“途上国の教育を向上させたい”という明確な将来像にこだわるのではなく、
「アフリカ」や「教育」といった、自分が魅力を感じるテーマに素直に向き合いながら、日々挑戦を続けています。
📷ナミビア共和国の港町のビーチにて遊んでいる様子
そして最後に、これから進路を考える後輩たちへ、こんなメッセージを届けてくれました。
「大学というのは、皆さんが思っているより、そして受験生当時の僕が思っていたより、ずっっっと面白い場所です。多様な背景を持つ人たちが興味関心を共有し、時に手を取り合い、時にぶつかり合いながら生きています。進学や受験について考えることは苦しいかもしれませんが、満足するまで悩んでください。その先に、自分の翼を大きく広げられる場所に、きっと出会えるはずです。」
この場所で過ごした時間は、やがて誰かの力になる。
先輩たちがつないできた想いは、今もここにあります。
その続きを描くのは、あなたかもしれません。
感謝!!!
インタビューの最後に、岡選手よりこんなお言葉をいただきました。